2016年06月

大手電力、顧客の離脱防止に生活支援サービスで対抗

 電力小売り全面自由化から2カ月間で、大手電力会社からの切り替えが100万件を突破、そのうちの約6割が東京電力管内となっている。大需要地を抱える東電管内が主戦場となるのは予想通りで、新規事業者では東京ガスや東急グループが善戦している。一方で、JR九州が在来線の駅舎や運転士が詰める小規模事務所1000カ所の電力を新規事業者に変更。鉄道事業全体で見れば大きな割合ではないが、地元の大手企業が新規事業者に切り替えたことで大きなインパクトを与えた。

大手電力は対抗策として〝もしも″の時に備える安心・安全サービスを売りに、顧客の離脱防止に力を入れている。九電は、遠く離れて暮らす高齢の親の安否確認などをはじめとした「九電安心サポート」を展開、東電はリフォームの見積もり依頼など請け負う「くらしアシスト」を提供している。

ただ、東電は関連会社となる送配電事業会社の「託送業務システム」に不具合が発生、小売事業者や発電事業者に対するデータ提供の未通知件数が4万件を超えている。政府から業務改善勧告を受けており、厳しい状況を強いられている。

小売事業者は300社を突破する一方、競争激化を背景に撤退企業も増加へ

 電力自由化から2カ月あまり。各社がさまざまな新サービスを展開する一方、顧客獲得競争の激化で撤退する企業も出始めている。

東京ガスは、グループ会社のライフバルやエネスタで販売している電気エアコンの購入とあわせて電気を申し込んだ場合、エアコン代を値引きする新サービスの検討に入った。電力使用量が増える夏場に向けて、新サービスで顧客掘り起こしを図る。また、九州電力グループの九電みらいエナジーと日本航空(JAL)は、関東(東京電力管内)の利用者を対象に電気料金100円ごとに1マイル積算できるサービスを創設した。サービスプランとしては、東電の「従量電灯B」に相当する「JAL マイルプランM」と「従量電灯C」に対応する「JAL マイルプランL」の2つ。

一方で、豊通ニューエナジーが小売事業者登録を抹消した。これによって撤退は5社になった。現在、小売電気事業者は300社を突破しさらに拡大する見通しだが、競争激化による生き残りも厳しくなっている。

電力自由化に伴う新規参入事業者で最も多いのはガス会社

 電力自由化から2カ月が経過し、大手電力会社からの新規事業者(新電力)への切り替えが100万件を突破した。「電力広域的運営推進機関」のまとめによると、5月末時点での切り替えは103万5500件となった。ただ、全体でみると大手電力各社の利用者の1.6%に過ぎず、消費者の中にはサービス内容の精査など、今のところ様子見傾向が強くなっている。

 自由化を受けて、これまでに電力小売り事業者として登録を済ませたのは約300社。このうち、実際に電気事業を展開、また事業化を表明しているのは67社で、業種別には都市ガスやLPガスなどのガス会社が21社と最も多い。ガス会社が積極的なのは、電力とガスのセット販売による事業拡大とともに、来年に迫るガス小売り自由化に向けた顧客流出防止への布石という狙いもあるようだ。

 このほかにも、流通・サービス、通信・放送、石油などを主事業とする新規事業者も新たなプランを提供しており、顧客囲い込み競争は今後、さらに激しさを増すものとみられる。

電力自由化で、60代以上は「どれだけ安くなっても変更しない」が4分の1

 調査会社の日本リサーチセンターが実施した「電力自由化についての調査」によると、4月の自由化以降、「電力会社を変更した」は2%にとどまった。一方で、「検討するつもりはない」が46%だった。

ただ、電力会社を変更していない回答者に対して、「電気代がいくら以上安くなれば購入先を変えるか」と聞いたところ、「5000-1万円」が最も多かった。20-30代は「1万円以下の割引でも変更したい」が6割以上となったが、60代以上では「どれだけ安くなっても変更しない」が4分の1を占めるなど、世代間で大きな違いが出ている。

電力自由化に伴い悪質商法も増えており、経済産業省は家庭に電気を小売りする事業者に対し、提携する販売代理店をホームページなどで公表するよう求める。大手電力の名を語って太陽光発電パネルを売りつけるなどの便乗商法が横行しており、同省などが対策を検討していた。6月にもガイドラインを改定し、約300社の電力小売事業者に公表を求める。