2015年07月

ドイツの事例で見る地域エネルギー事業者1

ドイツにはインフラ(ガス、電力、水道等)整備、運営を行う「シュタットベルケ」と呼ばれる地域エネルギー事業者が数多く存在している。シュタットベルケには自治体が出資しており、地域の資源や雇用の活用で地域貢献している。 

ドイツの電力市場は1998年に全面自由化されている。シュタットベルケが大手電力会社への競争力を持てた理由のひとつに地域に密着したサービスの提供があげられる。例えば、家庭のエネルギー消費診断サービスや家内で発生した障害への対応など、地域密着型の電力以外のサービスとして提供している。

こうした多様なサービスを組み合わせたパッケージを提供することで顧客の囲い込みに成功している。

 当初、シュタットベルケと比較して電気料金が割高であった大手の電力会社がシェアを強め、シュタットベルケは激減すると予想されていた現在も2割以上のシェアを保っている。

電力3社、託送料金申請

 2016年4月1日からの電力小売完全自由化に向けた「送配電網の使用量料金(託送料金)」の申請を、北陸電力・中国電力・沖縄電力の3社が他社に先駆けて7月29日に認可申請を提出した。
 申請料金単価はそれぞれ北陸電力8.08円/kWh、中国電力8.45円/kWh、沖縄電力11.50円/kWhとなった。
この秋に設立予定の電力・ガス取引監視等委員会により、妥当性が審査されたうえで今年中に決定することになる。

【コラム】「緑」のエネルギー、供給時の価値は「なし」

 制度設計ワーキンググループで示された指針として、FITで調達した電源を「グリーン」「クリーン」「環境にやさしい」と謳えないことになることがほぼ決定した。新電力も含めた電力各社は、環境意識の高い需要家をターゲットに、緑色の電力メニューの検討をしていたが、方向修正を余儀なくされる。
 第13回制度設計ワーキンググループで一部オブザーバーから「FITと謳うことが消費者の誤解を招くのでよくない」という意見が出た。FITつまり、固定価格買取制度により電気事業者が買い取った電源には、環境価値が含まれている。しかし実際に送電線を通り、需要地点で供給される際には、すでに電力会社に対してその分の補填費用が支払われておりその環境価値は失われている。もともとの電源が太陽光、風力、地熱などの環境価値が高いものだったとしても、消費する際には関係がない。「当社の電源はFIT電源です」といった場合の正しい認識は「国民皆様から集めたお金で成り立っている電源です」というものだが、一般需要家の多くはそう考えておらず、むしろ「FIT=クリーンな電力」と捉えていることが伺えるシーンであった。
  3円/kWhを超えるのではないかと見られていた再エネ賦課金は最終的に2015年5月~2016年4月までは1.58円/kWhに落ち着いたが、平均的な一般家庭の電気使用量が300kWh/月なので、実に470円/月、年間にして5000円を超える出費となる。FITは発電した電気に対する買取の制度であり、買取価格が下がっているとはいえ、国策として今後もFITの買取負担は積み重ねられていく。
 いずれ、需要家のFITという言葉に対する認知度があがることで前述の議論は起きなくなると思われるが、いま現在で「FIT電源を販売しています」というのが要らぬ誤解を生んでしまう可能性があるため、表記を禁止した方がいいというのは確かにその通りかもしれない。
  環境価値の高い電気を買いたい需要家に対する表示は、電源構成と供給量にラベルをつける必要があり、実務上、非常に煩雑であることが予想される。緑の電気に業務という付加価値がのせられてより高くなった電気のニーズについて今一度、考えてみる必要があるだろう。