電力会社を切り替えても「大差なければ現状維持」が消費者の本音

 NTTコムリサーチが実施したアンケート調査によると、電力自由化によって電力会社の切り替えを検討した人は17.5%で、検討の有無にかかわらず現時点で「様子見」世帯は63.9%を占めた。エリア別でみると、北海道と関東で変更した人の割合が高く、今後の変更意向も高くなっている。

 電力自由化がスタートして約3カ月が経過するにもかかわらず、様子見が多いのは自由化の仕組みがわかりづらいことや各社が提供しているサービスメニューの複雑さが背景にある。自由化で参入した新規事業者は料金の「安さ」を売り物に顧客獲得を目指しているが、消費者の多くは、「大きな差がないのであれば今のままでも良い」という考えも多い。

 こうした中で、東京電力子会社の東京電力パワーグリッドが新規事業者にデータを提供するための電気メーターの設定を誤り、電気使用量を過大測定したという事態が発生した。現在でも様子見が多い中で、こうしたトラブルが今後も相次ぐようだと自由化に対する関心がさらに薄れていく可能性がある。

大手電力、顧客の離脱防止に生活支援サービスで対抗

 電力小売り全面自由化から2カ月間で、大手電力会社からの切り替えが100万件を突破、そのうちの約6割が東京電力管内となっている。大需要地を抱える東電管内が主戦場となるのは予想通りで、新規事業者では東京ガスや東急グループが善戦している。一方で、JR九州が在来線の駅舎や運転士が詰める小規模事務所1000カ所の電力を新規事業者に変更。鉄道事業全体で見れば大きな割合ではないが、地元の大手企業が新規事業者に切り替えたことで大きなインパクトを与えた。

大手電力は対抗策として〝もしも″の時に備える安心・安全サービスを売りに、顧客の離脱防止に力を入れている。九電は、遠く離れて暮らす高齢の親の安否確認などをはじめとした「九電安心サポート」を展開、東電はリフォームの見積もり依頼など請け負う「くらしアシスト」を提供している。

ただ、東電は関連会社となる送配電事業会社の「託送業務システム」に不具合が発生、小売事業者や発電事業者に対するデータ提供の未通知件数が4万件を超えている。政府から業務改善勧告を受けており、厳しい状況を強いられている。

小売事業者は300社を突破する一方、競争激化を背景に撤退企業も増加へ

 電力自由化から2カ月あまり。各社がさまざまな新サービスを展開する一方、顧客獲得競争の激化で撤退する企業も出始めている。

東京ガスは、グループ会社のライフバルやエネスタで販売している電気エアコンの購入とあわせて電気を申し込んだ場合、エアコン代を値引きする新サービスの検討に入った。電力使用量が増える夏場に向けて、新サービスで顧客掘り起こしを図る。また、九州電力グループの九電みらいエナジーと日本航空(JAL)は、関東(東京電力管内)の利用者を対象に電気料金100円ごとに1マイル積算できるサービスを創設した。サービスプランとしては、東電の「従量電灯B」に相当する「JAL マイルプランM」と「従量電灯C」に対応する「JAL マイルプランL」の2つ。

一方で、豊通ニューエナジーが小売事業者登録を抹消した。これによって撤退は5社になった。現在、小売電気事業者は300社を突破しさらに拡大する見通しだが、競争激化による生き残りも厳しくなっている。